今年も特にアウトプットはできていないですが振り返りをすることにしました。理由はなんとなくタイトルで察するかと思います。
2022年10月にスリーシェイクに転職したわけですが、そこでやると決めていたのは情シス人材の育成でした。
会社として必要な取り組みでもありましたが、自身が今後のキャリアに必要と考え取り組んでいた育成について振り返ってみます。
また、成果について書くとメンティーへのフィードバックのようになりそうだったので自身が何を考え、行動したのかという点にフォーカスして振り返えることにします。
育成の目標
メンティーは年齢も情シスのキャリアもジュニアクラスでした。それを踏まえてどういった育成をすべきかと迷いましたが、漠然と「情シスのマネージャークラスを担える人材に育てる」ということは考えていました。
人材育成のノウハウがまったくない状態からのスタートでしたが、できるかどうかではなく大きなゴールを見据えたうえっでどこまでやるかというのを状況や成長度合いに合わせて都度考えることにしました。
心理的安全性の確保とコミュニケーション
自身はメンティーからするとキャリアや社会人経験がかなり上ということもあり、コミュニケーションがひとつのハードルとなることを想定していたため心理的安全性を一番最初に取り組みました。最初にここを失敗すると関係性や仕事を進めるにも支障が出てしまうため優先度、重要度共に高く設定していました。
筆者は出社まで片道2時間ということもあり、基本的にはリモートだったため、それを前提にコミュニケーションを組み立てる必要がありました。
- コミュニケーションのルールを作らない
- Googleカレンダーで予定を入れてGoogle Meet
- ちょっと話す時は声掛けしてSlack Huddleでサッと話す
- たまの出社時には対面で話す
- 非同期のコミュニケーション
- Slack上でも意見交換や議論を行える関係性の構築
- Slackで日報を書く習慣
これらを進めていく中で守っていたことは「一方的なルールづくりをしない」でした。押し付けられるルールほど窮屈なものはなく、やらされ感が出てしまうためです。
時間の経過でやりづらい、こうしたほうがいいかもという同意が取れたものにおいては互いのルールとして定めるようにしました。
Slackで日報は後述の習慣化でも書いていますが、コミュニケーションの側面もあるため早い段階でやり始めたいと考えていました。
また、関係性づくりは最初が肝心であるというのはそうですが、慣れてきたら手を抜いていいというものでもないので常に意識していました。
傾聴と自己開示
コミュニケーションは傾聴と自己開示を特に意識していました。
傾聴はヤフーの1on1, 部下を成長させるコミュニケーションの技法を以前読んで以来、日頃からの姿勢として意識するようにはなりました。ただ、相手の話や考えをしっかり引き出せているかと言われると未だに自信がないですが…。
コミュニケーションの一環として自己開示も意識的にやっていました。
- 自分の好きなもの/こと
- 考え方や性質
- 過去の失敗談
- 今までやってきたこと
- いま考えていること
仕事につながりそうな話題は惜しみなく出し、そこから気づきを得てもらえるような話の出し方には気を使っていました。思いついたタイミングでだらだらと話してしまうと時間だけを使ってしまうので、関連した話題や同じような経験の話が出てきた時に紐付けるような形で話すことが多かったです。
また、会話以外にも自分のtimesチャンネルで考えていることを置いていくということはやっていました。人の思考から気づきを得る体験が好きだから、という理由で自身の考えが誰かの助けになればと常々思っているからでもあります。
メンティーを知る
育成をするにも闇雲に進めるわけにはいかないので構築した関係性を活かしてしっかりとヒアリングしていきました。気をつけていたこととしては、キャリアやスキルの違いからメンティーが萎縮しないような対話を意識していました。
例えば、AWSについてどれくらい知っているのかを聞き出すにしても何を知っているのかという現状の知識やわからないことをわからないと言いやすい空気感を出すというのを心がけていました。
-
何が足りていないのかを知る
- 本人の主観で足りていないもの
- 一緒に仕事している人たちから見えているもの
- ヒアリング内容から自身が感じたもの
-
何を考えているのかを知る
- 仕事ぶりからみえてくるもの
- 周りとのやり取りの仕方
- 成果の内容
会話から聞けるものも大事だけど、周りからの評価や見え方(=関係性)も同じくらい大事なので情報が偏向しないよう意識していました。
目線合わせ
育成を考えるにおいて目線がズレてしまうことがよく起こりそうなので気にしていました。
メンターとしては先の未来まで含めて考えたり計画していてメンティーとみえているレイヤーが違うことも多いです。気持ちとしては少しでも追いついてほしいと思うわけですが、それが出来たら一人で成長できるわけなので焦らず寄り添う必要があります。
自分がしてほしいと思うところに基準を置くのではなく、メンティーの考えていることや行動にしっかりと目を向けてそこに対してどうであったかという会話や議論を行うようにしていました。対話や仕事を通じて思考や行動に変化があれば一歩先のヒントやアドバイスを出すようにして成長を促すというのもやっていました。
また、自分のものさしではなくメンティーのものさしで成果をみて褒めるというのも気にしながら行っていました。どうしても自分のできることを基準にみていると「出来て当たり前」という評価になってしまうし、メンティーからしても自分よりスキルのある人からしたらまだまだ足りていないという当たり前をぶつけられていると感じてモチベーションは上がらないと思います。
人を育成するにおいて自分を基準にするというのは何の役にも立たないという良い学びでもありました。
役割を伝える
メンティーを育成し、成果を上げてもらうのがメンターの成果なので以下のようなことはよく話していました。
- メンターは自身の成長のためのツールと思ってもらう
- 時間を奪ってしまうという遠慮よりも積極的にコミュニケーションを取る姿勢を評価
- メンターが知っていることは聞いたり教えてもらってラーニングコストを下げる
- メンティーには自分の成長を第一に考えて仕事に取り組んでもらう
- 日々業務だけではなく成長に繋がる業務もバランスよくやってもらうために手分けをする
- 成果や目標の進捗は定例で確認、継続して意識してもらう
仕事の中でメンティー自身だけだと乗り越えられないものに関しては課題を作成して解いてもらうということもしました。AWSという存在やサービス内容は説明を読めばなんとなくわかるけど実際に何から始めていいかわからない、といったものです。
AWSを使うといった場合は利用目的があるのが前提だと思いますが、情シスの場合だとせいぜいAWSアカウントやOrganizationの管理、ユーザーやSSOを運用するくらいなので個人でチュートリアルをするのはハードルが高いと思い、Route53のHosted zoneやS3の使い方、AWS CLIの操作やS3の静的サイトのホスティングなど、AWSを使ってもらうことを意図した課題を用意して課題をすべてクリアすると静的サイトが立ち上がる、といった成果がわかりやすいものを用意して達成感を味わえるものにしました。
AWSの管理部分に関してはインプットとレクチャーでどうにかなりますが、それ以外となると題材がないと中々触る機会がないと思ったというのもあり、課題を用意して触ってもらうというのは体験としてよかったようです。また、初学として周りに教えてもらえるものが課題として設定されている安心感がメンティーにはあったようでした。
習慣化
成長を感じられることとして、習慣を大事にするというのはあると思っています。
- 日報は欠かさず書く
- やったこと、次にやること、その日の感想を簡単でもいいから書く
- 一日を振り返ってよかったこと、よくなかったこと、わからなかったことなどを振り返る時間をつくるため
- 時間経過後の振り返りにも使える
- タスクは共有して見える化
- Notionでタスク管理
- タスク管理を始める→定着させることが目的
- 情シスの業務はタスク管理対象にするかどうかという判断はわりと難しい
情シスは日々変化する状況に合わせて改善していくためのタスクも多いので日々業務以外をタスクとして管理していました。日報は自分のためにもなる、というところが継続するモチベーションに繋がりやすいですが、タスク管理はどうしてもやらされる感が出てしまって継続が難しかったという反省がありました。
習慣を続けることで定量化につなげるというのは仕事の基本でもあるのでここはいろいろと改善してみたいです。そのために仕組みへの落とし込みと継続するためのモチベーションの工夫が必要そうです。
振り返ってのまとめ
今まで育成に携わることがなかったので自身としては始めての試みも多く、振り返りとしてはきれいにまとまっているようにみえるものの書籍からのインプットや見聞きしたことを真似してみるなどトライアンドエラーを繰り返していました。
ただ、その甲斐あってか上長の管理部長からは「1年前に比べて目に見えて成長を感じている」という評価をいただいていたようで、他者からの評価としてみても成果が出ていたのはよかったです。
また、振り返えるとハードスキルより圧倒的にソフトスキルの比重が大きくなっていて、自身が何に重きを置いているのかも見えてきました。
今年一年をまとめると
- まずは関係性づくり
- とにかく話を聞き、相手をインプットする
- ハードスキルよりソフトスキルから
- 続けていくことと変化していくことのメリハリ
こういった内容でした。アンコントローラブルをコントロールしようとしないというのは常々考えてはいますが、育成はその積み重ねであると強く感じた一年でした。 自身の転職タイミングでジュニアメンバーを育成できる環境に出会えるというのはそうないと思うので、運も味方していたと言えそうです。
そして転職
今年一年を通して情報システム部のマネージャーとして、そしてメンバーの育成に従事してきました。
育成についてはまだまだこれからという段階ではありますが、実は12月末をもってスリーシェイクを退職する運びとなりました。
転職のきっかけは元同僚であり、尊敬しているエンジニアの一人そんむーさんにお声がけいただいたからでした。スリーシェイクでは育成をはじめ、やり残したことがあり名残惜しいと思いつつも、急成長の中で会社/組織/カルチャーを一緒に作っていけるフェーズに参画できることを選択することにしました。
要求されるレベルに自分が応えられるのだろうか、という入社前からの不安がとてもあります。しかしながら周りから必要とされ、そしてチャレンジできる場がこの先どれくらいあるのかと考えた時に年齢を踏まえるとそう多くはないと感じています。
だからこそ、今だからできることをやる、そして楽しんでいくということを選びました。
年明けからは株式会社ヘンリーでの仕事が始まります。情シスという切り口から少しでも医療業界に貢献できるようがんばります。